東京都美術館『伝説の洋画家たち』に行く
『うらめしや~冥途の土産』に引き続き、東京都美術館に行く。
内容は『伝説の洋画家たち仁科100年展』、場所は同じく上野である。
『冥途の土産』はこじんまりとした美術館のため、少し物足りなかった。なので、引き続き歩いて行くことができる美術館に行く。つまり、ハシゴしたのである。(以下の画像は全てHPから)
展覧会の概要はこちらから↓
仁科会という美術団体の歴史とともに、そこで活躍した芸術家の作品を追うものである。
この仁科会(にかかい)は現在も存続している。
この展覧会は、とにかく作品数が多く、たっぷりと楽しむことができる。興味を持った方は、できれば2時間程度の余裕をもってご覧になって欲しい。
【全体的な印象】
20世紀の日本の画家、というと日本史や美術の授業ではほとんど扱うことがない。藤田嗣治や岸田劉生など、ほとんど名前を聞いたことがあるにすぎず、他の画家は名前も知らなかった。
全体的な印象として、日本人の洋画、というのはやはり独特のものがあってとても面白かった。当然、洋画の描き方であるのだが、風景や人物は日本のものである。「西洋の作品を真似ました」というものとは、一線を画する。
かなりの独断と偏見で語ると、「赤」の色使い西洋の洋画とは異なる気がする。全体に赤を使った作品があるのだが、錆色というか銅の色というか少しくすんだ赤の作品が多かった。そのためか、あまり派手ではなく、落ち着いた印象を与えているように思う。
【印象的な五つの作品】
パンフレットによると、130点以上もの作品が展示されている。
その中でも特に印象に残った作品をピックアップする。
先ず、
岡本太郎「重工業」
抽象画なので、意味などは理解しにくい。解説によると、ネギと歯車が描かれていることから、産業の変化を描いた作品のようだ。作品自体が大きいこともあるが、とにもかくにも存在感がある。むしろ、数ある作品の中でも何か得体のしれない圧迫感のようなものがある。ぜひ、生でご覧いただきたい。
萬鉄五郎「もたれて立つ人」
こちらも同じく、抽象画なのでやはり作品の意味などはわからない。しかし、前述したような赤銅色の作品であり、落ち着いたというか、成熟したというような印象がある作品である。
古賀春江『素朴な月夜』
タイトルには「素朴」とあるが、かなり派手でごちゃっとした作品である。シュールレアリスムの通り、テーブルの上に家、昼に満月など不思議な空間である。また、どこか南国のような生命力を感じる作品。
佐伯祐三「新聞屋」
画像で見ると、わかりにくいが、タイトルの新聞屋の入り口の部分は真っ黒である。普通、この角度というか構図で見たら中も多少は見えるだろう。しかし、真っ暗である。乱雑につっこまれた新聞とこの洞穴のような入口がどこか病的で不気味であり、印象に残る。
黒田重太郎『修道僧の像』
様々な色使いの作品が多い中で、かなりシックな色遣いの絵画である。
祈りを捧げる修道士、そして傍らにはどくろがある。むろん、本物の骸骨が転がっているわけではないだろう。象徴としての死、すなわち、メメントモリを暗示しているのだろう。これは、この展覧会の中でひときわ目立つものではないが、個人的にいいなと思う作品。
他にも、東郷青児『超現実派の散歩』
などがある。
私はあえてバラバラなものをピックアップした。しかし、当然ながら展覧会では共通点などを踏まえて展示してある。とにかく見どころの多い美術館であった。各々の画家の展覧会も機会があれば行ってみたいと思った。