『魔道師の月』読了
- 作者: 乾石智子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: 文庫
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『夜の写本師』の前日談である。
この作者の小説の醍醐味は「別人の人生を体験すること」である。
昔、デビルサマナーソウルハッカーズというゲームの中でビジョンクエスト
というエピソードがある。主人公が、別人になって人生を経験することである。
いや、そもそも物語自体がそういうものである。が、さらに主人公の視点が変わり
別人の生死を経験することによって成長と変化を遂げることである。
この主人公はいわゆる頭でっかちで人生経験に乏しい、と評価される人物である。
しかし、別人の生死を経験しその弱点を克服し、地に足のついた考え方や使命感
のようなものが生まれる。
こういうところを表現できるのが上手いなと思う。
もう一つの魅力は魔法の概念である。
魔法というと世代のせいかRPGに出てくる超能力という感じがする。
しかし、この作者のシリーズの魔法は呪術であり、闇の力である。
すなわち、何でもできる便利なもの、ではなく禁忌の力である。
にも、かかわらず主人公達はそれを使いこなしている。
溺れることもなく封じることもなく、闇の部分と上手く折り合いを
つける。これがテーマのようであるように感じる。