伽藍の堂

読書の記録が中心です。たまに音楽や映画などの話も書きます。

「悦楽の園 下」

女子中学生が主人公の物語である。優等生のポジションにいる主人公は、ヤンキーの染谷と変わり者の南一と出会い変わっていく。

この物語は、二つの読み方ができる。

一つ目は上巻参照。

 もう一つは、障害児教育の物語である。「空気を読む」ことのできない南一は学校空間から排除される。彼は、特殊なコミュニケーションのとり方をするからだ。作中ではアスペルガー障害とされている。ここでは、この作品における描写が医学的に適格かどうかには言及しない。

 主人公の相原真琴は、理解されないくい特徴を持つ南一をサポートしようとする。教室の空気を変える事を考えるのだ。また、同じ特徴を持つ大人達と出会い、サポートがあれば上手く社会の中でやっていけることに気が付く。それは、従順になることではない。サポート体制が必要だという話につながっていく。つまり、インクルージョン教育の必要性を描いている作品と言える。

 この作品は文庫から考えると、ティーンエイジャー向けの作品だろう。しかし、学校空間や教育のあり方を再考する上で、大人が読んでも十分に面白い。