『学力問題のウソ』
- 作者: 小笠原喜康
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/09/13
- メディア: 新書
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【評価】 ★★★★
【紹介】
サブタイトルには「なぜ日本の学力は低いのか」とある。しかし、学力低下について論じたものではない。この本は「学力と評価への誤解」と「知識と学習への誤解」の二つをテーマにしている。
「学力と評価への誤解」は、知識や学力は数値として客観的に測定することは出来ないということが述べられている。
「知識と学習への誤解」は、われわれは「モノ的知識観」に支配されているという。モノ的知識観とは知識が「ある」という前提に立っているものだ。そうではなく「ある場面で、その場面にふさわしい行動をとること」という「コト的知識観」が重要であるという。
【感想】
知識、学力、学習、評価などを捉えなおすことが必要であるという。職業柄(教育)学力を上げることを重要だと考えてしまう。
しかし、仕事をしているとフラッシュメモリーからパソコンへとデータを送信しているような気分になることがある。素早くデータを受信した子どもを「優秀」そうではない子どもを「課題あり」と考えてしまいがちなのだ。このことは受験競争を勝ち抜いた同僚もそうであるようだ。こうした学力観に支配されがちなときにこの本を読んだので非常に痛い指摘だった。
また、著者は「大学生のためのレポート・論文術」「議論のウソ」などの本も書いているだけあって、言葉の定義、因果関係などのつかみ方などが非常に上手い。上記の本を読んだ後にこの本を読むとクリティカルに物事を考える実践例としても読むことが出来る。