「宮台教授の就活言論」
- 作者: 宮台真司,石黒正数
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2011/09/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「14歳からの社会学」に続いて宮台節全開の本である。
第1章 なによりも適応力が求められている。
第2章 仕事は自己実現の最良の方法ではない
第3章 自己実現よりもホームベースを作れ
第4章 自分にぴったりの仕事なんかない
第5章 CMと就職情報サイトに踊らされない仕事選び
【感想】
職場や業務に適応することではなく、その場にその場に適応することが求められている。その力が適応力である。なぜならば、会社の社風や業務などは日々変化するからである。一つの物事に適応することではなく、臨機応変に適応する力が大切だと述べる。この話は非常に痛い。また、他人の視点や考えを読み取る能力も低いので第1章は読んでいてつらかった。
私にとって興味深いのは第3章の「ホームベースの基礎は我々」という話である。宗教的な何かをシェアしている
避難所に置いては物の取り合いが起きなかった、というエピソードである。自己啓発の手法がいくら流行して
も人間は自らを自律することはできないのだと思った。特に、極限的な状況ではなおさらである。「めんどくさいな」
と思っても何かをシェアし「我々」という感覚を取り戻すことこそが今の日本に求められているのだろう。
とはいえ、グループワークを通じて社会性を養う教育にしよう、という話には賛成できる。しかし、そうした機会を
経なかった人間や社会性の能力に乏しい人間はいかにして生きればいいのか。もう少し言えば、リハビリの機会は
与えられないのかが気になるところである。
「人間が所詮はしょぼい存在であることを出発点にすべきです。しょぼいからこそ人間関係を支えにする」
マスメディアによる宮台のイメージとはかけ離れた言葉だと思う。子育ても含めて年を取った宮台のこの言葉は深みがある。