伽藍の堂

読書の記録が中心です。たまに音楽や映画などの話も書きます。

「米国製エリートは本当にすごいのか?」

米国製エリートは本当にすごいのか?

米国製エリートは本当にすごいのか?


第1章 米国の一流大学は本当にすごいのか?
第2章 世界から集うエリート学生の生態
第3章 経済・ビジネス 資本主義への愛と妄信
第4章 歴史 歴史が浅いからこそ歴史にこだわる
第5章 国際政治・インテリジェンス 世界一視野の広い引きこもり


 アメリカの高等教育を著者自身の体験を通じて述べた本である。とはいえ、教育に関する部分は第一章と少しの部分である。退学はほとんどないし、入学試験の数学は日本の中学生レベルの問題であるそうだ。しかし、アメリカの大学の教育は大量に読ませ、書かせ、発表させる。このことにより、知識の整理や発信力や時間管理術などが身につくらしい。
 
 また、アメリカ教育の「実践性」を掘り下げた記述は興味深い。すぐに役立つようなものではなく、「一見わかりにくい実践性」を養うことに特徴があるそうだ。演繹的に物事を考える力、限られた情報から物事を予測する力の二つを涵養するのである。仮説を立て、検証し、修正することを繰り返す。そうすることによって抽象的な思考力を鍛えられる。これがアメリカの大学の特徴である、と著者は述べる

 
 あとは、アメリカに関するアレコレであり、言わば留学体験記である。タイトル通りの教育の話を期待した人は肩透かしをくらってしまうだろう。ジャーナリストである著者らしく記述は多岐に渡る。しかし、アメリカの大学で一番人気があるのは経済学の専攻であることとその理由の話は面白い。留学生の中国人や韓国人の話、日本とアメリカのインテリジェンスの比較なども楽しく読めた。私が一番興味深かったところは、アメリカは歴史の浅い国だからこそ歴史を学ぶ、という話である。