伽藍の堂

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「ボランティア もう一つの情報社会」

ボランティア―もうひとつの情報社会 (岩波新書)

ボランティア―もうひとつの情報社会 (岩波新書)

【評価】 ★★★★★

【紹介】

 ボランティアによって社会のネットワークを広げようというのが著者の主張である。様々なボランティア活動の紹介や、巨大な社会システムに支配されている現状、ボランティアにおける「報酬」は何かといった議論である。

【引用】

「ボランティアとは、切実さをもって問題にかかわり、つながりをつけようと自ら動くことによって新しい価値を発見する人である」

【感想】

 ボランティアの紹介や必要性は目新しいものではない。本書で興味深いのは「ボランティアのかかわりかた」における「自発性パラドックス」という概念である。ボランティアを行なうことは、「他人の問題」へと自分が関わることである。つまり、傍観者でなくなることである。ひ弱な立場になること、すなわち、自らをバルネラブルにすることである。なぜ、ひ弱な状態を選択するのか。そうすることによって、社会とのつながりを実感することができるとボランティアは知っているからである。

 私は大学時代の4年間ボランティア活動をしていた。「他者に出会う経験を積もう」という意図の下であった。本書の指摘するように、社会とのつながりを実感することや、著者の言う「報酬」を受け取ることもあったように思う。