伽藍の堂

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「読む技術 速読・精読・味読の力をつける」

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける (光文社新書)

【評価】 ★★★★★

仕事用

【紹介】

 本書は、「読み」の理論と読解ストラテジーについて述べている。

 読みの理論とは、読むという行為は、四つのプロセスにわかれている。画像取得活動→文字認識活動→意味変換活動→内容構成活動である。この本では、後半二つに焦点を当てて、読む技術を論じている。

 読解ストラテジーとは、TPOに合わせて読解をするための戦略のことである。読解の戦略は大きく分けて、「速読」「味読」「精読」の三つである。さらに細かくすると合計で八種類の戦略がある。

 速読には、話題と取捨選択の戦略が必要である。知識で理解を加速させること、要点を見抜くことが求められる。
 
 味読には、視覚化、予測、文脈の戦略が必要である。映像を鮮明に描くこと、次の展開にドキドキすること、表現を滑らからに紡いで読むことが求められる。

 精読には、行間、解釈、記憶の戦略が必要である。隠れた意味を読み解くこと、文に新たな価値を付与すること、情報を脳内に定着させることが求められる。

【名言】

「読む」ということは、文章に多様な意味を見出す行為であり、人間の創造力の基盤となる行為である (p.16)


【感想】

 非常に理論的に読むことを説明している。本屋に行けば、速読や読解力の向上を謳った本は山積みになっている。しかし、ここまで理論的、論理的に読む行為を論じたものは珍しい。専門用語や学者の名前も数多く出てくるが、文章構成がしっかりしているため読みやすい。また、各ストラテジーの説明のあとにまとめがあるので、これが理解や復習の手助けとなる。同じ光文社新書から西林克彦の「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」という本が出ている。しかし、こちらの方が断然良書である。(あっちの方がカンタンだから売れるだろうけど)

 自分なりの読み方である「読体」を対象化し、改善しようという試みは興味深い。