伽藍の堂

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『子どもに「日本語力」をつける本』

子どもに「日本語力」をつける本 何を教えるか、どう教えるか (PHP文庫)

子どもに「日本語力」をつける本 何を教えるか、どう教えるか (PHP文庫)

【評価】 ★★★★

仕事用
 
【紹介】

 国語教育の問題点を指摘し、入試には国語(現代文)の変わりに小論文を導入せよ、というのが著者の主張である。
 小論文を学ぶことによって、自分の意見を論理的に表現する能力や問題発見能力が養われるからである。また、それらはゆとり教育の理念とも合致するというのである。さらに、フランスで導入されている例や現在行われている小論文入試の問題点なども挙げられている。

【感想】

 私は、著者の考えに概ね賛成である。しかし、2点ほど問題点を指摘したい。
 一つは文化資本の問題である。著者がフランスは階級社会であるため、小論文を書くために必要な知識や思考力は生まれた階層によって大きく異なる。この文化資本の問題を日本ではどうするか、ということである。
 もう一つは、小論文を教える教師の問題である。「自由に書け」という作文しか習ってこなかった国語の教師が小論文の指導をするためのノウハウをどこで習うのかということである。おそらく、日本の大学教育(学部)でさえ、そうした指導はされていないだろう。