『ローマから日本が見える』
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 文庫
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【評価】 ★★★★★
【紹介】
古代ローマの盛衰を論じたものである。政治経済から文化、軍事まで幅広く説明されている。タイトルにもあるように当時の体制と現代日本の特徴を比較しながら論じている。
【感想】
非常に興味深い本である。上記の通り、現代の日本との比較が面白い。最初は、通俗本にありがちなことが述べられているかと思ったが、杞憂に終わった。
どの章も面白いのだが、強いて一番を挙げるなら「特別付録」の部分である。これには英雄の通信簿としてリーダーの条件とそれによって英雄が採点されている。
リーダーの条件とは一言で表せば「目的完遂力」である。それを五つの要素に分けるならば、知力、説得力、肉体上の耐久力、自己制御の能力、持続する意志となると著者は述べる。そして、全てを兼ね備えていたのはカエサルのみであるらしい。
例えば、キケロは雄弁家であったが、それは陪審員の心情に訴えかけるものであった。しかし、カエサルは利害が対立する相手を説得するような演説をした。カエサルのような弁論術が政治家には求められている、という著者の指摘は秀逸である。