伽藍の堂

読書の記録が中心です。たまに音楽や映画などの話も書きます。

『新・学問のススメ 生涯学習のこれから』と放送大学についての私的見解

【概要】


第一章 生涯学習のニーズ その基本的性格と課題
第二章 生涯学習と学びの場 放送大学に赴任して
第三章 遠隔教育手段による学習の実態 現場からの報告
第四章 遠隔教育の主役 世界の公開大学の現状
第五章 地域の生涯学習コミュニティーの形成 学習センターの役割
第六章 改革と挫折 学長の挑戦

放送大学の学長であった石弘光氏の著書である。生涯学習の説明と放送大学の取り組みを中心に記述されている。
また、上記にあるように、正解における生涯学習の場としての公開大学の取り組みの説明がなされている。

【感想】

 私は生涯学習放送大学には大きな関心を持っている。というのも、以前、大手の書店で放送大学の教科書が
販売されていたので、立ち読みすると面白かったからだ。大学の教科書なのでスタンダードな内容と最先端の内容が
書かれている。それらの書籍の値段も2000円前後なので、一般の書籍と比べると少し高い。しかし、新書よりも内容が
濃く、専門書よりは読みやすいものになっている。大学の学部の教科書から大学院の科目の教科書まで幅広く揃えてあり、
放送大学の教科書コーナーはいわば「学問のユニクロ」であった。
 
 もし、何かを「大学や大学院で学びたい」と考えている人がいるならば、当該分野の放送大学の教科書を何冊か読むこと
をおすすめする。教科書が一般の書店(大きめでないと扱っていないが)で販売されているので、別に入学する必要はない。
もちろん、大学生として入学するならば、教科書以外にもテレビやネットの授業、レポートなどの課題もあり、教科書
を読むことだけが放送大学の学習サービスではない。とはいえ、経営学社会学、心理学や法学など人気の科目やホットな
話題を扱っているので、試しに読んでみることは非常に良い経験になるだろう。

 
 というように、私の放送大学への評価は高いものである。ただ、私が「あなたは放送大学に入学したいか?」と聞かれたら
学生には失礼だが「うーん」となってしまう。なぜならば、言い方は悪いが「ブランドがない」のである。卒業するまでに
非常に努力が必要であるが、それでも「シュミ」として扱われてしまうのが現状である。もちろん、学士や修士の学位は取得
できるが。大手の書店に行き、販売されているテキストを10〜20冊ぐらい買えば良いかな、と思ってします。無論、日々の勉学はブランドなどに左右されるものではないものである。
 

 それはツイッター事件(「放送大学は大学ではない」と発言した心無い人物に現大学の学長が「私は学長です」と返答したこと)などからも見て取れる。むろん、こうした発言は心無い一部の人間の物の見方でしかないことはわかる。私の大学院時代には放送大学で学士をとり、その後私の大学院の修士・博士を終了し博士号を取得した人がいた。こうした人を私は非常に尊敬する。なので、放送大学を貶める意図はないことを明記したい。


 私の言いたいことを端的に述べれば「もったいない」ということだ。学んでいる学生の努力、教えている教員の努力が今一つ社会の評価につながらないことを私は残念に思う。繰り返しになるが、勉強はブランドや他人の評価を求めるために行うものではないし、何よりもそうした勉強ははつまらないものである。しかし、それを成し遂げた者に対しては何らかの評価があっても良いし、達成するためのインセンティブが存在しても良いと思う。

 で、放送大学には様々な課題があるだろうが、一番の問題は大学名にあると思う。これは法律により簡単に名称を変更できないようだが、「放送」というのはテレビやラジオを彷彿とさせる。そして、それを一方的に聞いている、つまり受動的な学習をイメージさせてしまうと、私は考えている。英語名はエアーからオープンユニバーシティになったようなので、公開大学になればイメージは変わるだろうと思う。でも、公開大学も少しダサい気がするので。

 ここは一つ「公共大学」や「日本公共大学」という名前はどうだろう?あとは、ロゴも変更した方がいいかな。
いかにも大学っぽいロゴに変更してみるのはどうだろう。