『女子学生、渡辺京二に会いに行く』読了
津田塾の学生(三砂ちづるゼミ)が、渡辺京二と対談をするという内容である。議論というよりは、卒論の執筆中の学生に考えるヒントをもらうという形である。卒論のテーマは国際協力、発達障害、子育て、学校教育などである。
いずれも教科書からのものではなく、自分の体験から問題意識を持ち、考えを掘り下げているところは凄い。
「社会福祉、看護系の特殊性と矛盾」というテーマの学生の発表部分は非常に興味深く読んだ。なぜなら、私が学生時代に感じた疑問や調べた内容とかなりの部分が重複するからだ。「親に反対されて保険会社に入った」という部分は異なるが(笑)感情労働の部分などをもう少し掘り下げて欲しいと思うが、いたしかたない。
この学生の凄いところは『ライ麦畑でつかまえて』を読んだことがきっかけ、という部分である。むくわれないセンチネルになろうとするところは非常に尊敬できる。
他のテーマも面白い。いずれも議論のための議論ではなく、アクチュアルな問題である。しかし、今日の価値観が全てではないことを、歴史的観点から渡辺京二が示すところが面白い。こういうのが高等教育の醍醐味である。
はたして、L型大学でこのようなことを行うのであろうか。