伽藍の堂

読書の記録が中心です。たまに音楽や映画などの話も書きます。

『僕らの声の届かない場所』読了

僕らの声の届かない場所

僕らの声の届かない場所


以前、さユりワンマンライブの時に彼女が『光と闇』の作曲について話していた。
この小説にインスパイアされたらしい。

3人の画家と一人の少女の話である。

 主人公は絵の才能がある。しかし、同時に深い闇を抱えている。
他人と打ち解けることもできない。ありていに言えば社交性に難がある性格だ。
気難しく、はれ物に触るような扱いをされている主人公にヒロインが歩み寄るところ
から物語が動き出す。

 元が演劇という性質だからなのだろうか。設定やストーリーはシンプルで読みやすい。
しかし、手負いの犬のように周囲に噛みつく主人公にはなんとなく共感してしまう。
また、主人公の周囲の人間が優しい態度からだんだんとむき出しの感情を出してくる
あたりは恐怖を感じる。オブラートが溶けて残酷な本音の刃がお互いを傷つけるようになる。
かけがえのない夢を求めるとこんな風になるのかなと思った。