伽藍の堂

読書の記録が中心です。たまに音楽や映画などの話も書きます。

『プロ弁護士の仕事術・論理術』読了

 

プロ弁護士の仕事術・論理術 (PHP文庫)

プロ弁護士の仕事術・論理術 (PHP文庫)

 

 

  たまには実用的な本について書いてみよう。大体において、ノウハウ本というものの9割は既知の内容である。正確に言えば、情報として既に持っているものだ。おそらく、著者にとっては長い間実践しているものなのだろう。いわば、著者の身体知として身についているものだ。しかし、読者からすると、言われている内容は当たり前のことに思えてしまう。大切なことは情報として持っていることではなく、実践を通じて身につけることである。

 

 この本も書いてあることの大半は当たり前の内容である。タイトルのプロ弁護士というフレーズから特別な技を期待してはいけない。また、文学者や哲学者のトリビアルな言葉が散見される。この辺は好き好きである。

 

 では、なぜこの本を取り上げたのか。有意義な点が2つあったからだ。

 

 1つは、基本の確認である。特に、「メモを取ること」の効用や番号をふることなどは、「やっぱりね」と大切な基本を確認する上で有効であった。

 

 もう1つは、「人間を見抜く」という部分である。弁護士という言葉や著者の経歴からエリートのホワイトカラーであり、デスクワークが中心かと思う。しかし、当然ながら弁護士は事件を扱う職業である。事件にまつわる人間を相手にするときのノウハウが面白かった。これは、タイトルからは逆にイメージしにくい。

 

 「人間を見抜く」という部分では、「マイナスをもたらす人との接し方」や「どこかおかしいと感じた時」「ツキのない人は遠ざけよ」などの小節がある。

 

 特に、「どこかおかしいと感じた時」は丁重に扱うべし、と述べている。この部分はとても腑に落ちた。私は短気な人間である。チクリと嫌味を言ってやりたい衝動にかられる時がある。絶対にやめようと思った。

 

 「ツキのない人」というよりも、自分を「被害者」相手を「加害者」にしたて上げることが上手い人というのが存在する。学生時代と異なり、職場の人間関係というのは長く続くのだ。ひとたび、「悪者」と認定されてネガティブキャンペーンを続けられたらたまったものではない。自分を殺して丁重に接しようと思った。恥や敗北ではない。合理的な生存戦略なのだ。

 

「君子危うきに近寄らず」である。ゆめ忘れるな。