伽藍の堂

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『教育幻想 クールティーチャー宣言』

教育幻想 クールティーチャー宣言 (ちくまプリマー新書)

教育幻想 クールティーチャー宣言 (ちくまプリマー新書)

仕事用


【紹介】

 教育や学校をめぐる問題を社会学的な視点、コミュニケーション論的な視点から捉えなおそうとするものである。教師と生徒との関係性、教師にとって必要なモノの見方を説明している。それをサブタイトルにもあるように「クールティーチャー」という概念で説明している。
 クールティーチャーとは、「事柄志向」に基づきながら指導することができる教師である。もうすこし説明すれば「心の教育」ではなく、「行いの教育」「徳目」ではなく「ルール感覚」を身に付けさせることができる教師である。
 このクールティーチャーを目指すべきだというのが本書の提言である。


【名言】

「ピュアネスのためのリアリズムを」(p189)

【感想】

 教師と生徒との関係には上下関係が必要だ、と著者は述べる。しかし、かつての管理教育的なものではない。道徳縛るのではなく、最低限のルールによって欲望を統制するためであるという。本書は、昔の管理教育の問題点、今の戦後民主主義的な教育の問題点を整理している。さらに、その上で教師の現実的な役割を提言する。

 教育や福祉、医療といった対人社会サービスに関わる職業は美徳や理想、理念の重要性が強調される。特に過去のパラダイムを批判(いや否定かな)しながら理念を強調する。しかし、現実的に考えるとどうなるのか、ということことは見落としがちである。この本は場当たり的な対処ではない、現実に即した対応をするための理論として非常に興味深い。