伽藍の堂

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「友達幻想 人とのつながりを考える」

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)

【評価】 ★★★★★

仕事用

【紹介】

 なぜ人間関係に悩むのか。自分を全人格的に受け止めてくれる人間がいるはずである」という考えを「友だち幻想」と著者は定義する。そうした絶対受容を求めるのでない人間関係の築き方を著者は提唱している。それは、他者の他者性を認めながらルール関係とフィーリング関係を使い分けることである。なお、他者との間のルールは最低限のものでよく、自由になるためのルールである。
 
 また、著者は、かつての伝統的共同性からネオ共同性へと変化していると著者は述べる。同調圧力が発生する点では同じである。しかし、前者は生命時の相互性であり、後者は「不安」の相互性である。このように、人と人とのつながりを社会背景の変化を含め、現代に即した関係のとり方を論じている。
 
 【引用】

「人はどんなに親しくなっても他者なんだということを意識した上での信頼感のようなものを作っていかなければならないのです」
(p128)


【感想】

 名著である。概念の創出の仕方が上手い。読みやすいのは専門用語を使わないというだけの理由ではない。論理構成がしっかりとしているので、高度な内容をわかりやすく説明している。

 職業柄、中学生や高校生の人間関係の悩みや不安をよく聞く。学校や教室という空間は生活共同体である。修学旅行や体育祭や文化祭などの共同作業をさせれば人間関係が上手くいくと思っている。

 しかし、本書で述べるようなルール関係を教えることが必要であると思う。私が「金八先生」のような教師を嫌うのは、フィーリング関係を押し付けるからだ。教師の教室運営においてはルール性の維持と管理が必要という指摘は秀逸である。この点は同著者の「教育幻想」を参照して欲しい。

 とはいえ、ラノベやエロゲにすっかりそまっていた現代っ子の私には上記の引用部分は非常に耳が痛い(笑)他者の他者性や他者の二重性について学ぶ機会が欲しかった。