『星か獣になる季節』読了
前半と後半でストーリーというか登場人物が異なる(一部同じ)。
というよりも、後半は長い後日談のようである。
前半部分は少し「?」なところがある。友達の森下が好きなアイドルのために殺人を犯す。しかし、理由なり行動原理なりが不可解である。
「恋は盲目」というにはあまりにも、殺伐と、冷淡に殺人を犯す。私は、この森下の心理が上手く理解できなかった。しかし、『虹ヶ原ホログラフ』の感想と同じように、こうした狂気はもはや「そういうもの」として自然に受け入れられるものなのかもしれない。
後半は一気に面白くなる。殺された被害者に近しい人が中心となって物語が進む。自分自身は襲われたわけではない。肉体的な外傷は何一つない。しかし、大きな禍根を残している。いくつもの「どうして」という問いが空回りしたやりとりが続く。大きな喪失を経験した人の心理が上手く描かれている。まさに彼らは「生き残り」なのだ。
直接ストーリーとは関係ないが、何よりも作者のあとがきが良い。
青春を軽蔑の季節だと、だったと気付けるのはいつだろうか。どこで、それに気づくんだろう。それは愚かさの象徴で、だからこそ、一番に輝かしい。簡単に他人を否定したいね。軽蔑したいね。
ああ、確かに。まさに。